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国際単位系
国際単位系(略称SI)は日本の「寸」やアメリカの「ヤード」など、国ごとに異なる単位を使うのは不便なので統一しましょうという働きの基に生まれたものです。国際度量衡総会(略称CGPM)によって定められています。
SI単位
日常で何気なく使っている温度や質量などの単位の定義は、実はコロコロと変わっています。変わっていると言っても体感できないぐらい極微小な変化のため、規格に関わりがあったり、規格の影響を受ける業種の人たち以外には何の影響もありません。
以降に示す定義は、2019年に改定されたものです。2019年改定でのもっとも大きな変化は、すべての基本単位が原器から解放された点にあります。いわゆるキログラム原器はもうないのです。代わりに基本単位の基準となるのが、下記7つの定数です。
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定数定義 | 記号 | 値 | 単位 |
---|---|---|---|
セシウムの超微細構造遷移周波数 | ΔνCs | 9 192 631 770 | Hz |
真空中の光の速さ | c | 299 792 458 | m s-1 |
プランク定数 | h | 6.626 070 15×10-34 | J s |
電気素量 | e | 1.602 176 634×10-19 | C |
ボルツマン定数 | k | 1.380 649×10-23 | J K-1 |
アボガドロ定数 | NA | 6.022 140 76×1023 | mol-1 |
視感効果度 | Kcd | 683 | lm W-1 |
この定数を基に、SI基本単位は下記のように定義されています。
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量 | 単位 (名称) | 単位 (記号) | 定義 |
---|---|---|---|
時間 | 秒 | s | セシウム133原始の摂動を受けない基底状態の超微細構造遷移周波数を単位「Hz」で表したときに、その数値を9192631770と定めることによって定義されます。 |
長さ | メートル | m | 真空中の光の速さcを単位「m s-1」で表したときに、その数値を299792458と定めることによって定義されます。 |
質量 | キログラム | kg | プランク定数hを単位「J s」で表したときに、その数値を6.62607015×10-34と定めることによって定義されます。 |
電流 | アンペア | A | 電気素量eを単位「C」で表したときに、その数値を1.602176634×10-19と定めることによって定義されます。 |
熱力学温度 | ケルビン | K | ボルツマン定数kを単位「J K-1」で表したときに、その数値を1.380649×10-23と定めることによって定義されます。 |
物質量 | モル | mol | アボガドロ定数NAを単位「mol-1」で表したときの数値であり、アボガドロ数と呼ばれます。 |
光度 | カンデラ | cd | 周波数540×1012Hzの単色放射の視感効果度Kcdを単位「lm W-1」で表したときに、その数値を683と定めることによって定義されます。 |
SI組立単位
SI基本単位を掛け合わせて表される単位です。この中でもSIには、固有の名称と記号を与えられた22個の組立単位があります。
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組立量 | 名称 | 単位 | 導入年 |
---|---|---|---|
平面角 | ラジアン(radian) | rad = m/m | 1960年 |
立体角 | ステラジアン(steradian) | sr = m2/m2 | 1960年 |
周波数 | ヘルツ(hertz) | Hz = s-1 | 1948年 |
力 | ニュートン(newton) | N = kg m s-2 | 1948年 |
圧力、応力 | パスカル(pascal) | Pa = kg m-1 s-2 = N/m2 | 1971年 |
エネルギー、仕事、熱量 | ジュール(joule) | J = kg m2 s-2 = N m | 1948年 |
仕事率、放射束 | ワット(watt) | W = kg m2 s-3 = J/s | 1948年 |
電荷 | クーロン(coulomb) | C = A s | 1948年 |
電位差 | ボルト(volt) | V = kg m2 s-3 A-1 = W/A | 1948年 |
静電容量 | ファラド(farad) | F = kg-1 m-2 s4 A2 = C/V | 1948年 |
電気抵抗 | オーム(ohm) | Ω = kg m2 s-3 A-2 = V/A | 1948年 |
コンダクタンス | ジーメンス(siemens) | S = kg-1 m-2 s3 A2 = A/V | 1971年 |
磁束 | ウェーバ(weber) | Wb = kg m2 s-2 A-1 = V s | 1960年 |
磁束密度 | テスラ(tesla) | T = kg s-2 A-1 = Wb/m2 | 1960年 |
インダクタンス | ヘンリー(henry) | H = kg m2 s-2 A-2 = Wb/A | 1948年 |
セルシウス温度 | セルシウス度(degree Celsius) | ℃ = K | 1948年 |
光束 | ルーメン(lumen) | lm = cd sr | 1948年 |
照度 | ルクス(lux) | lx = cd sr m-2 = lm/m2 | 1948年 |
放射性核種の放射能 | ベクレル(becquerel) | Bq = s-1 | 1975年 |
吸収線量、カーマ | グレイ(gray) | Gy = m2 s-2 = J/kg | 1975年 |
線量当量 | シーベルト(sievert) | Sv = m2 s-2 = J/kg | 1979年 |
酵素活性 | カタール(katal) | kat = mol s-1 | 1999年 |
- 上記のうち、大文字で始まる記号の単位は人命に由来するものです。
- 1Kの温度差は1℃の温度差と等しいですが、273.15Kの差を考慮する必要があります。
SI接頭語
SI接頭語はキロ(k)やメガ(M)など10のべき乗を表し、SI単位を端的に表すために使用するものです。そのSI接頭語に2022年11月18日、実に約31年ぶりに新たな接頭語「ロナ(1027)」「ロント(10-27)」「クエタ(1030)」「クエクト(10-30)」の4つが追加されました。
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接頭語 | 記号 | 10n | 制定年 |
---|---|---|---|
クエタ (quetta) | Q | 1030 | 2022年 |
ロナ (ronna) | R | 1027 | 2022年 |
ヨタ (yotta) | Y | 1024 | 1991年 |
ゼタ (zetta) | Z | 1021 | 1991年 |
エクサ (exa) | E | 1018 | 1975年 |
ペタ (peta) | P | 1015 | 1975年 |
テラ (tera) | T | 1012 | 1960年 |
ギガ (giga) | G | 109 | 1960年 |
メガ (mega) | M | 106 | 1960年 |
キロ (kilo) | k | 103 | 1960年 |
ヘクト (hecto) | h | 102 | 1960年 |
デカ (deca) | da | 101 | 1960年 |
デシ (deci) | d | 10-1 | 1960年 |
センチ (centi) | c | 10-2 | 1960年 |
ミリ (milli) | m | 10-3 | 1960年 |
マイクロ (micro) | µ | 10-6 | 1960年 |
ナノ (nano) | n | 10-9 | 1960年 |
ピコ (pico) | p | 10-12 | 1960年 |
フェムト (femto) | f | 10-15 | 1964年 |
アト (atto) | a | 10-18 | 1964年 |
ゼプト (zepto) | z | 10-21 | 1991年 |
ヨクト (yocto) | y | 10-24 | 1991年 |
ロント (ronto) | r | 10-27 | 2022年 |
クエクト (quecto) | q | 10-30 | 2022年 |
SI接頭語は下記のような慣例や利便性を考慮して決定しているようで、結果として残った「Q」と「R」の記号が割り当てられました。
- SI単位やSI接頭語、その他非SI単位で使用されている記号は使えません。
- 勘違いしやすい記号(数字のゼロに似ている「O」、虚数の「i」、積の記号に似ている「x」)も使えません。
- 正の指数は大文字、負の指数は小文字とする。
- 正の指数は語尾を「a」、負の指数は語尾を「o」にする。
A | SI基本単位「アンペア」 | a | SI接頭語「アト」 |
B | 非SI単位「ベル」 | b | 非SI単位「バーン」 |
C | SI単位「クーロン」 | c | SI接頭語「センチ」 |
D | d | SI接頭語「デシ」 | |
E | SI接頭語「エクサ」 | e | 非SI単位「電子ボルト」(eV) |
F | SI単位「ファラド」 | f | SI接頭語「フェムト」 |
G | SI接頭語「ギガ」 | g | SI単位「グラム」 |
H | SI単位「ヘンリー」 | h | SI接頭語「ヘクト」 |
I | 数字の1と混同する | i | 虚数のiと混同する |
J | SI単位「ジュール」 | j | |
K | SI基本単位「ケルビン」 | k | SI接頭語「キロ」 |
L | 非SI単位「リットル」 | l | 非SI単位「リットル」 |
M | SI接頭語「メガ」 | m | SI基本単位「メートル」 SI接頭語「ミリ」 |
N | SI単位「ニュートン」 | n | SI接頭語「ナノ」 |
O | 数字の0と混同する | o | 数字の0と混同する |
P | SI接頭語「ペタ」 | p | SI接頭語「ピコ」 |
Q | SI接頭語「クエタ」 | q | SI接頭語「クエクト」 |
R | SI接頭語「ロナ」 | r | SI接頭語「ロント」 |
S | SI単位「ジーメンス」 | s | SI基本単位「秒」 |
T | SI単位「テスラ」 SI接頭語「テラ」 | t | 非SI単位「トン」 |
U | u | µと混同する | |
V | SI単位「ボルト」 | v | |
W | SI単位「ワット」 | w | |
X | 積の演算記号と混同する | x | 積の演算記号と混同する |
Y | SI接頭語「ヨタ」 | y | SI接頭語「ヨクト」 |
Z | SI接頭語「ゼタ」 | z | SI接頭語「ゼプト」 |
単位の書き方
単位を書くときは、下記のようなことに気を付けてください。なおここでは可読性を上げるために、一部の空白を「␣」と表します。
- 単位はローマン体(立体)で書きます。
適合例:1.23 m / 不適合例:1.23 m - 数値と単位の間には空白を入れます。
適合例:1.23␣m / 不適合例:1.23m - 角度の度「°」、分「′」、秒「″」については、数値と単位の間に空白を入れません。
適合例:1°23′45″ / 不適合例:1␣°23␣′45␣″ - 「℃」と「℉」については、数値と単位の間に空白を入れます。
適合例:1.23␣℃ / 不適合例:1.23℃ - 「%」については、数値と単位の間に空白を入れます。
適合例:12.3␣% / 不適合例:12.3% - 接頭語と単位の間には空白を入れません。
適合例:1.23 km / 不適合例:1.23 k␣m - 物理量は「数値×単位」で表すものであるため、単位を括弧で囲いません。
適合例:1.23 m / 不適合例:1.23 [m] - 物理量を記号で表す場合、単位を括弧で囲います。
適合例:L [m]、L (m) / 不適合例:L m - 組立単位のうち「単位×単位」は、空白を入れるか「・」を入れます。
適合例:N␣m、N・m / 不適合例:Nm - 「/」を2つ以上並べません。
適合例:kg m-1 s-2、kg/(m s2) / 不適合例:kg/m/s2 - 単位に接頭語は1つだけとします。ただしkgはそれ自体がSI単位であるため、接頭語付きとはみなしません。
適合例:kJ/kg / 不適合例:kJ/ms - とはいえ、kgにさらに接頭語を付けてはいけません。
適合例:mg / 不適合例:µkg
- より厳格に書くなら、下記のようにすると良いでしょう。
- 単位に「/」を使いません。
- 単位の積は「・」ではなく空白を入れます。
- 単位を囲う記号に[xx]と(xx)のどちらを使うかは好みの問題です。ただしどちらかといえば[xx]が多いと思います。
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